無職の夢日記

夢日記

メグという犬

 夢の中の私はメグという名の犬を飼っていた。

 大型犬だった。全身が白くて柔らかい毛に覆われた、穏やかな表情をした犬だった。

 メグは私が赤ん坊の頃からずっと側にいた。ネグレクト気味の親に代わって、彼女はいつも私を見守ってくれていた。親のような存在だったし、メグも私のことを自分の子供のように愛してくれていたと思う。

 

 夢の中の私は小学生だった。学校から帰ると一目散にメグのもとへ向かい、ランドセルを背負ったまま彼女に抱きつくのが日課であった。柔らかい体毛が私の顔を撫でる感触と、メグの陽だまりのような匂いを今でも覚えている。

 メグを散歩に連れて行くのは私の役目であった。毎日学校終わりの午後に、大きな水筒を持って出かけるのだ。目的地は近所の公園である。公園には広い運動場があった。私とメグはいつもそこでクタクタになるまで走り回るのだ。

 

 外は夕方だった。夕焼けが住宅地をオレンジ色に染めていた。シチューの匂いが辺りを漂っていたのを覚えている。幸せな匂いだった。

 公園に着くと私は水筒の水を飲み、メグには公園の水道の水をやった。私が蛇口を捻るとメグは喜んで水を飲むのだ。私はメグの喜ぶ顔が大好きだった。メグの頭を撫でると彼女はこちらを向いてニッコリと笑った。夕陽に照らされた彼女の笑顔は、現実世界では見ることのできない、どこまでも無垢な笑顔であった。

 

 散歩から帰ると、私とメグは自室のベッドに飛び込んだ。メグのお腹に抱きつきながら眠りにつくのだ。暖かく、シルクのような柔らかい感触が私を包み込む。明日は休日だ。起きたらメグと一緒にご飯を食べるのだ。朝の子供向けのアニメをメグと見ながら、カリカリのトーストにいちごのジャムをたくさん塗ってかぶりつくんだ。その後はまた公園に行こう。今度はボールを持っていって、メグと目一杯遊び尽くすんだ。

 

私が大人になったとき、メグはもう死んでしまっているのだろう。

 

 ふと、そう感じた。恐らく、今この瞬間が夢の中だと私が認識し始めたのだろう。目が覚めたとき、メグは私の側から居なくなってしまう。何故なら、現実世界にメグは存在しないのだから。

 私はなんだか悲しくなってメグにぎゅっと抱きついた。メグは何も言わずにただ私の頭を撫でてくれた。

 

 

 夢から目覚めた後も、メグがそこにいる気がしてならなかった。

 

 

終わり